そして、いよいよ伐木開始です。チェンソーになれるため最初に購入したマキタの18V充電式チェンソーで、キャンプ場予定地にある耕作放棄地の灌木を伐ることにしました。

主にヤナギ、マユミ、ウツギなど、根近くから沢山枝分かれ(幹別れしているといったほうが正しい?)している木が対象です。高さは3~5m程度、直径は太いものでも20cm程度、平均すると10cm弱程度の木です。
高さ20m 、直径50cmもある杉や赤松の大木に比べると簡単に伐れそうです。

しかし、一番地面に近い幹から一本の木としてまとめて伐ることができれば話は簡単だったかもしれません。地面近くから横に広がるようにたくさん幹分かれしている木の場合、姿勢をかなり低くして枝の下に潜り込むといった感じで伐ることになります。また、枝が絡んでいたりしてどの方向に倒れるのかよくわからないので、伐った木が自分の上に倒れてくることを防ぎきれません。

そんな恐ろしいことはできないので、結局、地上30~50cmぐらいで分かれているたくさんの幹の一本一本を、幹の重心の反対側に回り込んで伐ることにしました。この方法だと一本の木を伐るのに、外側の幹から内側の幹に向けて5~10本ぐらい(多いものは20本ぐらい)の幹を伐ることになります。しかもそれぞれの幹の重心の反対側に回り込む必要があるので、右から伐ったら次は左といったように木の周りをあちらこちらに移動しながら伐ることになります。

実はこの、 どのように伐るべきかを考えながら あちらこちらの方向に移動しながら、次々に伐っていくという状況が問題だったのです。

マキタの充電式チェンソーはバッテリー込みで3.1kg。軽くはないが重すぎるほどではないという、ずっと持ち歩くには微妙な重さです。また、充電式のため、スイッチ一つで、稼働状態と停止状態を切り替えることができます。この、微妙な重さとスイッチという手軽さから、伐る方向と場所を探すことや伐ること自体に集中してしまい、チェンソーを置くことを忘れ、ずっと持ち歩いたままで一本の木を伐っていたのです。それをどれだけ繰り返すかといえば、キャンプ場作りの整地のためですから、伐る木の数は100本?と言いたくなるほどの本数です。それを切るべき幹の本数に換算するとその10倍ぐらいはありそうです。一体何本の幹を伐ることになるやらという感じです。

伐り始めた初日には問題は発生しませんでした。3日目ぐらいになると腕と腰が筋肉痛になってきました。そして、1週間ほど過ぎたある日、指が痛くなってきたのです。

目覚めた時、無意識に指を曲げると激痛が走るのです。特に右手です。右手の指のほうが倍ぐらい痛いのです。無意識に利き手である右手でチェンソーをずっと持ち歩き続けてしまったからだと思います。そして、その時はわかりませんでしたが、ばね指という一種の腱鞘炎の症状があらわれていたのです。

目覚めた後、少しずつ指を曲げ伸ばしすると、痛みはなくなり曲げ伸ばしできるようになってきます。そのため、日中、ばね指のことは忘れてしまいます。また、この時期、チェンソーで木を伐ることと並行して、人力で土砂に埋没した水路の掘り出しを行っていました。これもシャベルを掴むという指を酷使する動作の繰り返しです。筋肉痛と同じように、しばらくすると症状が治まるだろうと高を括っていたのですが、1ヶ月経っても治りません。さすがに心配になってきて病院に行きました。整形外科です。

診断結果を1センテンスに強引にまとめると、「リュウマチではないので腱鞘炎(ばね指等)が一番疑われる。腱鞘炎は安静が最大の治療。」ということでした。結局、ばね指とは長い付き合いをしていくしかないという結論です。IT業界という指を使うといえばキーボードといった環境で30年以上も過ごし、しかも定年という年齢。そんな中、突然、手作りキャンプ場を作り始めたのです。これまで過保護に育っていた指には耐えられなかったのだと思います。

チェンソーによる伐木作業で、指(特に右手の指)に負荷をかけていたのは次の二つです。

  1. チェンソーを持ち歩くとき無意識に利き手である右手で持ってしまっていることです。3.1kg、これはスーパーで買い物をしてこれぐらいの重さのレジ袋を歩いて持ち帰ると途中で指が痛くなってくる重さです。
  2. 右手で持つレバーにチェーンの回転を制御するスロットルレバーが付いていて、力を入れなくてもレバーを深く握りさえすれば回転が上がります。しかし、なかなかきれない太い幹や枝などの場合、ついつい最大の力で握りしめて伐ろうとしてしまいます。

1、2とも意識すれば治ることです。1については、伐るとき以外はチェンソーを地面に置くことにしました。さらに、チェンソーで伐るとき右手のほうに負荷がかかることもあり、左手で持ち歩くことにしました。2はスロットルレバー をできるだけ力を入れずに握るように意識することです。

1は簡単に実行できました。しかし、2は意識していてもいつの間にか強く握りしめてしまう時があります。この記事を書いているときには、かなり力を入れずにスロットルレバーを握れるようになってきましたが、それでも、なかなか切れない固い木や太い木を伐るときはまだ力を入れてしまっているようです。 こればかりは、慣れに時間が必要なようです。

このように、チェンソーでの初めての伐木は、想定外の問題からのスタートとなったのでした。