確かに、この方法で大幅に、地上近くから幹が枝分かれして複雑に入り組んでいて、それぞれの幹の太さが5cm程度の低木の伐木は、大幅に効率化されました。しかし、安全面で絶対に気を付けなければならないことがあります。

それは、林業用のヘルメットをきっちり着用することです。

幹を続けざまに伐っていくとき、この方向に倒れるなと見当をつけて、その方向以外の立ち位置から伐るのは当然なのです。しかし、いくら真剣に検討しても正確に何本目まで伐ったときにこの方向に確実に倒れると言い切ることはできません。幹が複雑に絡みすぎていて伐った幹が、まだ伐っていない幹に挟まれたりして見当と違う方向に倒れる場合もあれば、倒れずに伐った幹全体が真下にずり落ちてくる場合もあります。

この時、ほぼ間違いなく、伐った幹は自分の頭の上に落ちてきます。理由は二つあります。

一つ目は、杉やヒノキのような大木であれば倒れ初めの予兆から倒れ始めるまでに少し時間があります。しかし、このような低木の幹の一つ一つはそんなに太くなくすぐに伐れてしまいます。そのため、倒れる予兆もなくまとめて伐った幹が突然倒れてくるのです。

二つ目は、この手の低木を伐る場合、その樹形(本記事トップの写真を参考)からどうしても、幹が広がっている下に潜り込む形で伐木しなければならないことです。どこをどう切ろうが根元のほうを伐る限りにおいて、木の下に潜り込んで伐るしかないのです。

幹が倒れてこない場所から伐るのは鉄則ですが、このように広がる樹形の下に潜り込んで伐るためいくら注意しても自分の上に倒れてくる場合があります。そうすると当然、倒れてきた幹から逃げるのですが、中途半端なところまでしか逃げきれない場合があります。これが問題で、幹から分かれた複数の枝が面となって自分の上に落ちてきて、その中のいくつかの枝が体に突き刺さるように倒れてきたり落ちてきたりすることがあるのです。大きなけがにはならななかったのですが、腕など枝がささったり擦れたりして小さなけがそれなりの確率で発生するのです。

結局、何回かこのことを体験するうちに最も被害が少ない方法を見つけることができました。それは逃げないことです。そうすると、伐った幹の付け根に近いところが自分の頭の上に落ちてきます。これをヘルメットで受けるのです。サッカーのヘディングのように、落ちてきた幹をボールと見立ててわざとヘルメット真上のところに当てるのです。そこには幹から分かれる枝がありません。また、複数の幹と言っても体のほうに落ちたり倒れたりしてくるものはその中の1本程度で直径も5cm前後のものです 、 しっかりヘルメットで受けるとなんの問題もありません。中途半端に逃げるよりも、そのほうが圧倒的に体への被害が少なくなかったのです。

注)この方法は伐木のいろいろなテキストを読んでも全く載っていません。全くの自己流なので、同じことをする場合は自己責任でお願いします。

筆者の場合、「初心者の伐木 その1」でも述べていますが、この方法に至るまでに、慎重に経験を積み上げました。例えば、太さ5cmと10cmではその重さは別物です。最初は、一本一本の幹を丁寧に伐っていき、伐った幹を自分で持ち上げたりして、その重さの違いを体感しました。そして、これぐらいの幹の太さまでなら、ヘルメットで受けても大丈夫と言い切れるぐらいの感覚が持てるくらい何本もの幹を伐りました。

また、伐った木の種類もマユミ、ヤナギ、空木だけです。木の種類によっても硬さ、重さや枝ぶりは異なります。そのため、これ以外の木の場合はそれらを伐り始めたときのように、新たに経験を積み上げてから、まとめ切りをすることにしています。

 

しかし、その対策だけであれば、林業用のヘルメットでなくても、土木工事用のヘルメットでもよさそうなものです。そのほうが林業用ヘルメットより数段安く手に入ります。ところが、もう一つ、3つ目の問題があるのです。それは、伐木の何回かに一回は、伐られた幹が倒れるとき、それが 伐られていない幹の枝に 当たり、その枝が突然自分のほうに跳ねてくる場合があります。体にあたるだけなら、そのほとんどは衣服が守ってくれます(なので、夏でも長袖は必須)。しかし、顔に向かって枝が跳ねてきて当たるとかなり痛く、目にでも入れば大けがになりかねません。

その点、林業用のヘルメットは、チェンソーで伐っているときに飛び散る切りくずから顔を守るために顔の前に網のフェイスガードが付いています。これさえしておけば、跳ねて顔に向かって来た枝も怖くありません。伐木にはチャップスや林業用ブーツなどの安全装備は必須ですが、それは、例外的に危険な状況に陥った場合に有効です。このような低木を伐る場合、林業用ヘルメットは、常に有効に働くのです。

このように、本格的な伐木のスタートは、伐木の教科書に載っていない方法を自分で試行錯誤して見つけるという、想定外の状況から始まったのです。

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