教えてもらうと、その方法の理屈は簡単でした。抜きたいパイプの下方部にそのパイプと直角ぐらいに交わるように金テコバールを置き、その二つをロープで結びます。
それが下の写真1です。地面に縦に刺さっているパイプが抜きたいビニールハウスのパイプです。地面の下60cm程度まで刺さっています。そのパイプの右横の地面に水平に置かれているのが金テコバールです。先端から20cm程度のところでビニールハウスのパイプと交わらせています。
写真1
ビニールハウスのパイプと金テコバールをロープで結ぶ
そして金テコバールの先端の片方を地面に置き、写真に写っていないもう片方の端を持ち上げます。そうすると、手でどのようにしても抜けなかったビニールハウスのパイプが簡単に地面から出てきました。それが下の写真2です。ビニールハウスのパイプのロープで結ばれているところより下の部分が土で覆われているのがわかります。これが地面に埋まっていた部分です。
写真2
引き抜かれたビニールハウス用パイプ
写真2には映っていませんが、地面に当たっている金テコバールの先端の反対側を手で持ち上げています。大きな力を入れずとも簡単に持ち上げることができました。手で引っ張っていた時の苦労はいったい何だったのだろう?という感じです。テコの原理でなので当たり前といえば当たり前、うまくいけば非常に簡単です。
しかし、この方法には慣れが必要です。原理は簡単なのですぐ理解できますが、ポイントが3つほどあります。
- 金テコバールのような頑丈な1~1.5m程度の棒を用意する必要がある。
- ロープの結び方にコツがある。簡単に結ぶことができ、簡単に解くことができる、かつ、力がかかっても解けない。抜く本数が多いのでこの3要素のすべてが成り立たないと作業時間が大幅に増えてしまう。
- 金テコの先端を置く地面を固くする必要がある。力をかけたとき金テコの先端が地面にめり込まないようにするため。
1ですが、このようなことに遭遇したことのない人は、案外このような丈夫な棒を持っていないと思います。これを買うとなるとそれなりの出費ですが、これは他の作業にも使える道具でもあり必要経費として割り切るしかないと思います。
次に2ですが、これが最大のポイントです。後からわかったのですが、その結び方は「巻き結び」というものです。師匠となるS氏があまりにも素早く簡単に結び、そして解くのにびっくりです。蝶結びよりもかなり簡単です。
最後に3ですが、これは写真3にあるように金テコと地面の間に石やレンガなどを挟めば簡単に解決します。
この方法で、30本ほどのパイプを1時間ぐらいで抜くことができました。シャベルで掘っていたら1日で終えることができなかったと思います。この時点からS氏は師匠になりました。
●後日談:
インターネットで検索するとビニールハウスのパイプの引き抜き器具は安いものでは4000円ぐらい、普及品で1~2万円程度で売られていました。頻繁にパイプを抜き差しするビニールハウス建設のプロなどではその金額に見合う効果が得られると思いますが、年に1回程度もしない者にとってはオーバースペックのように思えます。
都会での分業の世界では、その道のプロが専用道具をそろえ効率を上げることで社会の効率性を上げています。しかし、田舎のようなセミプロ的に自らがいろいろな作業を少しづつ行う世界では、いかに汎用道具で安く簡単にできるか、ということが重要になってきます。
しかし、このような生活に根差したスキルを伝承する仕組みが都会にはありません。かといって、田舎も人工減によりこのようなスキルの伝承者がいません。
改めて、日常生活のスキルの伝承ということを考えさせられた来事でした。
以下は、山里暮らし初心者日記の関連記事(本内容を実際に行っていた時のブログ)です。
最近のコメント