「チェンソー」の記事からの続きです。

本格的な伐木を開始するまで、 チェンソーの記事にあるように、木は、小さな木から少しずつ大きな木へ、ツールは、小パワーの充電チェンソーからパワーのある林業用エンジンチェンソーへと、2週間ほどかけてチェンソーの挙動に慣れることに専念しました。そして、いよいよ、本格的な伐木を開始することにしました。

まず、最初に始めたことは、耕作放棄地にたくさん立っているマユミなどの地面の近くから幹別れしている木をエンジンチェンソーで切ることでした。

チェンソーに慣れることを目的にしていた時は、これらの木をマキタの充電チェンソーで一つの幹ごとに丁寧に切っていましたが、これでは効率が悪すぎます。そのため、本格的な伐木においては、STIHLの林業用エンジンチェンソーで一気に伐木することにしたのです。

充電チェンソーは小型のため、比較的地面に近いところでも、幹と幹の間にチェンソーのバーが入るため、幹一本一本を倒れる方向を等を考えながら伐ることができました。しかし、エンジンチェンソーはそれに比べバーも本体も大きく、幹と幹の間にエンジンチェンソーを入れることができるのは、地面よりかかなり高いところ(地面から70~80cm、場合によっては1mぐらい)になってしまいます。

これでは、その高さで全ての幹を伐り、その後もう一度高さ10~20cmぐらいのところで伐りなおす必要があり非効率です。そこで、試しに、小ぶりの木で、幹一本一本を個別に切り方を検討して伐るのではなく、木全体で伐ったときの倒れ方を検討し、複数の幹を一気に切ることにしたのです。

なぜ、小ぶりの木でこの方法を試すことにしたかというと、このような木の伐り方がコマツ教習所で受けた「伐木等の業務に係る特別教育」や、その後に移住先で受けたチェンソー講習会でも、説明がなかったためです。

伐木の特別教育では、お互いが絡み合っている木をいきなり伐り倒してはいけないと習います。まず、その絡みの状態を解除してから一本一本倒すこと、そうしないと、例えば、2本の木が絡み合っている場合、一本目を伐ったときは倒れず、2本目を伐っている最中に突然予期せぬ方向に2本の木が同時に倒れてきて非常に危険な状態になる、ということが理由です。確かに、直径15cmくらいの杉やヒノキであれば高さも10mくらいある木もあるので、そのような状態になっていれば、その通り危険だと思います。

しかし、ほとんどのマユミの幹は5cm前後、太くても10cm程度で、高さも2~3mしかない低木です。幹同士の絡みを取り払いながら伐るのであれば、充電チェンソーで伐ったときのように幹一本一本倒れ方を検討して丁寧に伐っていくしかありません。それでも、想定していた以上に幹と幹が絡んでいて、倒れてこないことが頻繁に起きます。その意味では、教科書通りに伐木することが不可能と言ってよいかもしれません。

このように考えると、伐木の特別教育は、どうも林業などの材木になる木を伐ること生業としているような人の伐木環境を想定しているように思えてなりません。マユミなどは林業から見れば小さな雑木でしかなく、そもそも対象にしていないのでしょうか?

そして、いよいよ小ぶりな地面近くで幹別れしている木の一発伐木の試し切りです。まず、注意したことは、安全装備を完全にすることです。小さな低木といっても、まとめて一気に何本もの幹を伐ると何が起こるかわかりません。林業用のヘルメット・手袋・最高安全性能の規格を有するブーツ(重さ約3kg)・チャップス(STIHL製のチャップスで、ホームセンターで販売しているようなものに比べて倍ぐらいの厚みがあります)です。

まず、伐り始める方向を決めます。木全体を見て概ねこちらのほうに傾いているという方向の幹から一気に伐り始めることにしました。これは一見するとセオリーとは逆の伐り方です。しかし。傾いていないほうの幹から伐ると伐った幹が木の中心のほうに倒れて他の幹に寄り掛かり、倒れなくなる可能性高くなります。これは充電チェンソーで試し切りをしていたときに得た経験です。

そして、いよいよ伐り始めます。想定通り、最初の一本は他の幹に絡んで倒れません。宙に浮いています。そして2本、3本と伐り進んでいくうちに、伐った幹が一体となってゆっくりと倒れ始めます。この倒れ始めるタイミングこそがこのような木を伐るときに最も重要なタイミングなのです。

先ほども書きましたが、通常、倒れる方向の反対側から伐ります。そうすることの理由はいくつかありますが、一つの理由として、チェンソーのバーや鋸が切り口に挟まれて動かなくなることを避けるためです。倒れる方向と反対側から伐ると、伐り進むにつれて切り口は開いていきます。ところが、倒れる方向から伐ると伐り進むにつれて切り口がふさがり、バーや鋸が切り口に挟まれて動きにくくなります。さらにそのまま伐り進むと、伐り口からバーや鋸を抜くことができなくなります。このような状態を切り口がバーや鋸を咬むというようで、木を伐る世界では常識中の常識というところでしょうか。

しかし、今回の伐り方は、倒れる方向から一気に複数の幹を伐るというものです。本来であれば、チェンソーのバーが伐り口に咬まれ、その時点で伐り進めることができなくなりますが、複数の幹が絡み合っている状態で幹を伐っても伐った幹は宙に浮いているので、この咬まれるという状況が発生しません。

問題は、この倒れるタイミングをどのようにして知るかです。例えば、一本目は宙に浮きました、2本目も宙に浮きました、そして3本目、伐り進んでいくと突然チェンソーのバーが伐り口に咬まれ伐り進むことができなくなります。何も考えずに伐り進んでいくとかなりの確率でこの現象が発生します。倒れ始めるタイミングではすでに遅いのです。上記の例では、3本目で倒れましたが、実際には2本目で倒れるときもあれば4本目で倒れることもあります。さらには1本目で倒れるときもあります。

結局、この新しい方法での試し伐りでは、その倒れるタイミングがわからず、倒れる幹を伐るときにバーがほとんど咬まれるという結果終わりました。これが杉やヒノキなどの大きな木で起こると、チェンソーのバーが切り口から取り出せなくなり後始末が大事になります。バーからチェンソー本体を外し、そのチェンソー本体に別のバーを取付、再度伐りなおす。または、予備のチェンソーで再度伐るといったことをしなければなりません。しかし、直径5cm程度の幹の低木です。バーを咬んだ幹を手で押すことで伐り口を開いてバーを取り外すことができました。とはいえ、結構力が必要で、このことを繰り返しながら伐り進めることはあまりにも非効率ですし、チェンソーも痛みます。

そこで、つぎに考えたのが、倒れるタイミングの予兆を知ることでした。実は、倒れる始める前に、チェーンソーでの伐る進み具合が少しずつ悪くなるのです。少しずつ咬まれる度合いが強くなっているのだと思います。 しかし、その抵抗がどの程度の強さになるまで問題ないのかがわからないのです。 そこで、この予兆をより身体で理解できるようにするため、チェンソーでの伐木をやめ鋸で伐木することにしてみました。

これは効果てきめんでした。チェンソーで伐っていた時よりも早くに咬まれてしまい、伐り進めることができなくなるのです。それは当然で、エンジンのパワーと人のパワーの差そのものだからです。これを何回か繰り返している内に、チェンソーが咬まれるより先に「この幹を伐ると今まで切ってきた幹と合わせて倒れるな!ということがわかるようになってきました。

しかし、鋸は直接伐るということが体に伝わりますが、チェンソーは伐り口と身体の間にチェンソーと言う機械が入ります。チェンソーで伐ってみても鋸と同じ感覚をつかむことができるか? そのような不安はありましたが、実際チェンソーで伐ってみると、この「倒れるな!」という感覚が以前チェンソーで伐っていた時よりより鮮明にわかるのです。これにはびっくりです。

そして、この「倒れるな」という感覚を得た瞬間、伐っていた方向 の反対側(倒れる方向の反対側)から伐るようにしました。このことにより、バーが咬まれることなく伐り進められるようになったのです。

ただし、逆側から伐るということは絡み合った幹の中心方向から伐ることになりますので、幹と幹の間にチェンソーのバーが入らない場合があります。この場合は、小型の伐木用の鋸で伐ります。

このチェンソーと鋸の合わせ技でこの手の木の伐木の効率は大幅にアップしました。充電チェンソーで一本一本丁寧に伐っていた時の比べて5倍ぐらいの速さで伐ることができるようになったのです。

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