このようにして、太さ10cm以下の低木の伐り方に関して、自分なりの伐り方を見い出していきました。次に挑戦したのが、同じ種類の木ですが、より大きく育っている木です。この場合、伐るべき幹の太さは10~20cm程度、今まで伐っていた木の倍ぐらいの太さになってきます。

このぐらいの径になると、さすがに、頭の上から木が落ちてきてもヘルメットで受ければいいや! と言っている場合ではありません。体の方に倒れてこないように伐ることが必須となります。そもそも、理屈以前に直感的に怖さを感じ始めます。

倒す方向の基本は木の重心の方向です。この程度の太さで重心の方に倒すのであれば、受け口を作る必要はありません。ただし、いきなり重心の反対方向から伐ると、伐る部分が少なくなってくると、その部分が裂けていきなり倒れる場合があります。それを避けるためには、重心側から地面に水平に切り口を1/3程度入れ、その後、重心の反対側から、その1/3伐った切り口に向かって、少し斜め上から伐ります。そうすると、倒れるときに裂けていた部分がすでに伐られているので、木を裂けさせることなく伐ることができます。

しかし、重心の方向と異なる方向へ倒したい、または、倒さなくてはならない場合があります。これが、結構厄介なのです。伐木の教科書では、倒す方向をコントロールする方法として、受け口の方向、ツルの厚み、楔(くさび)の入れ方などでコントロールする方法が書かれています。しかし、この程度の低木の場合、その方法はあまりうまく機能しないのです。

なぜかというと、ほとんどの幹がまっすぐに立っていないからです。斜めに伸びているもの、曲がりくねって伸びているものなど、幹の形が複雑だからです。例えば、楔(クサビ)を打つにしても径が細すぎて楔の効果を発揮させることができません。楔を入れられるぐらいまで伐ると楔を入れる前に倒れてしまう場合もあります。

結局、試行錯誤して、初心者にとって最も良い方法は、倒したい方向からロープで引っ張るということでした。この場合、10cm程度と20cm程度で、引っ張り方を変える必要がありました。10cm程度であれば、人力で直接引っ張っても、それなりに引っ張った方向に倒れます。しかし、20cm程度になると、倒したい方向の反対側に大きく傾いているような木の場合、人力で引っ張るだけでは木の重さに負けて、木は重心の方向に倒れてしまいます。

そこで、使ったのがプラロックという製品です。木を引っ張る道具としてはチルホールが代表的であり、教科書にはこの器具を使って引っ張る方法が結構書かれています。しかし、チルホールの場合、ワイヤーを巻き取る形で引っ張るので、装置自体が重く、また、巻取りを繰り返す中でワイヤーがねじれてきて扱いが面倒そうです。そこで、ロープをギアで挟んで引っ張る(巻取りではない)タイプのプラロックを選択したのです。

挟んで引っ張っているためロープがねじれません。また、木に引っ掛けるのもロープワークだけで済みます。そして、何よりも軽いです。この程度の木であれば、ホームセンターで販売している中の強度の高いもので十分引っ張ることができます。

チルホールやプラロックのような器具の使い方は、インターネット上にたくさん記事がありますので、ここでは割愛しますが、結果は大成功でした。

まず、伐る前にロープをかけます。それから受け口を伐ります。そして、ロープを引っ張りテンションをかけます。それから追口を伐ります。普通、この程度の太さの木を重心のある側から伐ると、チェンソーのバーが切り口に挟まれて動かなくなります(口径が大きな木は楔(クサビ)を打って追口に隙間作ることで防ぐことがでますが、この程度の太さの木では楔を入れられるようになる前に倒れてしまいます)。反対側からロープで引っ張ることにより、このバーが挟まれることを防いでいるのです。そして、教科書では楔を打ち込んで倒す、となっているところまで追口を伐ったところで、プラロックを一気に引っ張ります。これですんなり倒れます。

プラロックをセットしたり、ロープを木にかけたりと、伐木する時間が大幅に増えますが、安全と引き換えであれば安いものだと思います。何よりも、伐り始める前の恐怖心を減らすことができます。

このようにして始めた低木の少し太い幹の伐木ですが、1年近くかけてこの手の木を100本ぐらいは伐りました。そして、最近、この程度の木を伐るときのプラロックの出番が大きく減ってきています。相変わらず、倒したい方向と反対側に大きく倒れている場合はプラロックを使っていますが、それ以外でプラロックを使うことはほとんどなくなりました。

それは、上下2段で伐ることを覚えたからです。これは弓なりに曲がっている幹の場合非常に有効です。弓なりに曲がっている幹の場合、地面近くで伐ろうとすると、その重心がどちらにあるのかよくわかりません。なので、ロープで牽引して倒していました。しかし、この上下2段で伐る方法だとチェンソーで2回伐るだけです。伐る時間を大幅に短縮できることができました。

まず、胸や肩ぐらいまでの、重心が反転するところを伐るのです。この高さになると、根に近い部分より一回り細くなっているので、受け口は作りません。受け口側から少し切り、その後反対側からその切り口に向かって切るという方法ですみます。場合によっては一気に追口だけで伐る場合もあります。それは、倒れる前に裂けても、大きな裂け方にならないと判断した場合です。そして、次に、地面近くを伐ります。この時の木の高さはすでに胸や肩の高さです。万が一、体の方に倒れてきても大きなけがにはなりませんし、手で受け止めたり、払いのけたりすることも可能です。

この方法、実は、ロープで引っ張ることを始めたときから気が付いていたのです。しかし、胸や肩の高さで伐ることが怖かったのです。根に近いところで伐る場合、腕を脇に寄せ、腰に力を入れて切ることができるのですが、胸や肩の位置だと、腕の力だけで伐ることになります。これに怖さを感じていたのです。

「小板まきばの里」の企画が持ち上がり、その前哨戦としての整地を始めるまでは、IT系の企業に勤める単なるサラリーマン。特に腕が非力な体格でした。すぐに腕が参ってしまい、チェンソーをうまくコントロールできなかったのです。ところが、1年近くも整地作業を行っていると、腕や胸板の筋肉は倍ぐらいになったような感じです。チェンソーを持ち上げて使っても力的に無理なく操作できるようになってきたのです。

チェンソーの重さは、なんだかんだと言って5kg程度はあります。それはスーパーで売っている精米袋と同じ重さです。それをずっと手で持って作業するのです。都会育ちの非力なサラリーマンでは太刀打ちできない重さなのです。

これからも、この手の木をまだまだ伐っていきます。その中で、また、伐り方もきっと進化していくと思います。ですが、低木の伐り方はいったんここで筆をおきます。次回からは、直径20~35cm程度の幹の木の伐木の話に移っていきたいと思います。

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